大人から見て、子どもにやめてほしいことがあった時、子どもにどのように声かけしているでしょうか?
声かけをしているのに、一向に子どもの行動に変化がないばかりか、何度も同じことを繰り返す子どもに、だんだんと大人の方がイライラとしてきます・・・。つい、こんな言葉を言ってしまったことはありませんか?
「またそんなことして!」
「ちゃんとしなさい!」
「何回同じことを言ったら分かるの!?」
挙句の果てには
「お母さん(お父さん)はもう知らないからね!!」「勝手にしなさい!!」 ときつい言葉でピシャリ。
果たして、こうした声かけで子どもの行動は変わったでしょうか?
結果は「NO」だと思います。
私たちがいくら声かけをしても、このような言い方では、子どもに伝えたいことがきちんと伝えることができていません。子どもにしてみれば、何を声かけされたのかとても分かりにくいですから行動が変わることもありません。
子どもにきちんと伝わる効果的な声かけには、以下の3つのポイントがあります。
①子どもの行動を実況中継する。
②具体的な数字を含める。
③子どもの行動に対して結果をつける。
それでは、それぞれ解説していきましょう。
子どもにきちんと伝わる効果的な声かけの仕方
子どもの行動を実況中継する
効果的な声かけの仕方の一つ目のポイントは「子どもの行動を実況中継すること」です。
分かりやすく例をあげてみましょう。子どもが、洗面所で水遊びをして、床がびちゃびちゃになってしまったとします。
「いけません!!何してるの!!」って叱りたい場面ですよね。
ですが、ここではその言葉は一旦飲み込みましょう。
代わりに子どもの行動や状況を、アナウンサーになったつもりで実況しましょう。
「あらあら!お水を出しっぱなしにして遊んでいるから、床がお水でびちゃびちゃよ!」
「床だけじゃなくて、○○ちゃんのお洋服までびっちょり濡れちゃっているわ!」
こんな具合に実況中継をします。この声かけですと、子ども自身が、今自分が何をしているのかが、よく分かります。
「いけません!!何しているの!!」と言われた場合ですと、言葉の通り、「僕(私)は何をしたんだろう?(なんで怒られたんだろう?)」と思うわけです。
これは、子どもが良いことをしてほめる場面でも使えます。「えらかったね」「よくできたね」と褒めるのは、悪くはありませんが、これだけでは、子どもは 「何がえらかったのか」 「何がよくできたのか」分かりづらいです。
ここは、もう少し言葉を添えましょう。
「絵本をちゃんと本棚にしまえたね」
「きちんと靴をそろえたね」
「お友達に、ありがとう (ごめんね)って言えたね」
このように伝えると、子どもは具体的に何が良かったのかがよく分かります。見たり聞いたりした状況を、そのまま伝えるだけなので、難しいことはありません。
具体的な数字を含めると伝わりやすい
2つ目のポイントは「具体的な数字を含めて伝えること」です。
「苦手なピーマンを3口も食べられたね」
「テーブルの下に落ちたゴミを10個も拾えたね」
というように、「3口」「10個」などの具体的な数字も含めて声かけすると、より子どもに伝わりやすくなります。しっかりと状況を言語化して伝えてあげましょう。
これらを意識して声かけをするだけでも、十分に子どもは自分の行動をよく認識することができるようになります。子どもは大人の気持ちにとても敏感ですから、これらの声かけをするだけで自ら行動を正す子もいるでしょうし、もっと褒められることをしようと意欲的になる子もいるでしょう。
「自分のことをしっかりと見てくれている」と思うと、子どもは頑張り屋になります。ですから、子どもをよく観察して、丁寧な声かけをしてあげましょう。
子どもの行動に対して、結果をつけるようにする
三つ目のポイントは『子どもの行動に対して、結果をつけるようにする』です。
大人もそうですが、頑張ったことに対してご褒美があると、次も頑張ろう!って思いますよね。
先ほどの、「子どもの行動を実況中継する」ことに加えて、さらにその行動がもし 褒められるような良かった行動だった場合、『良い結果』(=ご褒美)を用意してあげましょう。
ここで言う『良い結果』とは、「ありがとう!」「かっこいいね」「お母さん嬉しいな」というような褒め言葉や、優しくハグしてあげたり一緒に遊んであげたりする等のスキンシップをとることを意味します。時には、普段食べないちょっと特別なおやつや、それほど高くない買い物をするのもありだと思います。
例えば、食事し終わった後に、子どもが食器を重ねて、台所に運んでくれた場合、
「食器を重ねて、台所に運んでくれたね」(←実況中継)
「ありがとう!お母さん助かったわ!(満面の笑顔で)」 (←良い結果)
というように言います。すると、子どもは「この前、あれをやったら、お母さんが褒めてくれたな」というように、ポジティブな感情として記憶します。そうすることで、良い行動も徐々に増えていくようになります。
他にも「あとで絵本を読んであげるね」「一緒に○○をして遊ぼう」「ぎゅーしてあげるね(と言ってハグ)」 なども子どもが喜ぶことでしょう。
子どもによって嬉しいな・欲しいなと思うものにも違いがあるので、その子に合わせて結果の中身を変えてみてください。
よくない行動・やめてほしい行動をした場合にはどうするのか?
子どもがあまり好ましくない行動をした場合には、どうしたらよいのでしょうか?このような場合には、子どもがあまりほしくないな、と思うような 結果を用意します。
前述の『子どもが洗面所で遊んで、床を水浸しにしてしまった』というケースを例にしてみましょう。子どもが遊ぶべき場所ではない洗面所で、水遊びをしてしまい、しかも洗面台や床まで水浸しで、びしょびしょになってしまった。このような行動を次からしないように、子どもに声かけをするなら実況中継のように子供の行動を伝えながら、次のような言い方をします。
「あら、お水を出しっぱなしにして遊んでいるから、床がお水でびちゃびちゃよ!」(←実況中継)
「水浸しになっているから、雑巾できれいに床をふきますよ」(←あまりほしくない結果)
というように「床をふく」という結果を用意します。子どもは、水浸しにしてしまった自分の行動に対して責任をとらされることになるので、ややネガティブな感情として記憶します。そうすることで、「次からやらないように気をつけよう」と子ども自身に意識づけをすることが目的です。
他には、掃除をする、元の状態にもどす、かたづける、謝る、ゲームの時間が減るなど 何かよいことがなくなる 等、色々な結果が考えられるでしょう。
ただ、ここで1つだけ、注意していただきたいことがあります。
子どもの行動に対して用意する結果を 極端にしてはいけません。
これは 特に、子どもがよくない行動をした時に、親が感情が高ぶってイライラしていたりすると、極端な悪い結果を言ってしまうことがあるからです。
例えば、子どもがジュースを床にこぼしてしまい、後始末をしている最中に、子どもがふざけてお箸を投げたらどうでしょう?自分に余裕がなくなってしまうと、子どものちょっとした行動にもイライラしますよね。でも、そんな時こそ注意しなければなりません。
なぜなら、アドリブで悪い結果を言うのはだいたい極端になりがちだからです。
そういう悪い事態を防ぐためにおすすめなのが、以下の対策法です。
事前に紙に書き出して、結果を決めておき、見える場所に貼っておきましょう。
それも、できるのであれば子どもと一緒に話し合いながら、決めるのがいいでしょう。良くない結果を実践する前には、子どもの行動に対して結果の度合いが対価として見あっているか、極端になってはいないかをよく熟考する必要があります。
まずは、たくさん子どもを褒めることから
ここまでお話してきましたが、子どもに何かを伝えたいなら一番大切なことは、まずはたくさんその子を褒めてあげましょう。褒めるというと、何か特別なことを褒めるということかと思われる人もいますが、そうではありません。
『その子自身のできていることを、その子自身をそのまま認めてあげること』です。
例えば「今日も「ただいま」の声が元気でいいね!」というようなことでも十分でしょう。子どもの心には「きちんと僕(私)を見てくれている。嬉しいな。」という気持ちが広がります。できて当たり前のことと思わず、こうした声かけをたくさんたくさんしてあげて、子どもの心の充電をいっぱいにしてあげましょう。
子どもの心の充電が満たされていると、大人が「これだけは伝えたい!」というような、ここぞ!という時、子どもが話を聞いて受け止める余裕があるので、しっかりとお話を聞くことができるようになります。ですから、子どもをたくさんたくさん褒めてあげて、心の充電をいっぱいにしてあげましょう。
たかちゃん先生