「SST(ソーシャルスキルトレーニング)でどんなことをすればいいんだろう?」
「勝ち負けのこだわりが強い子がパニックを起こさず、仲良く遊べる遊びはないだろうか?」
こうした悩みがあるあなたにおすすめなのが、有名なボードゲームの『ディクシット』です。
『ディクシット』はコミュニケーション・ボードゲームとして銘打っており、SST(ソーシャルスキルトレーニング)にもよく取り入れられています。
実際に私の支援学級でも使っていましたし、通級の担任務める友人の学級でも使っていると聞きました。
この『ディクシット』が突然トレンド入りしたので、「なにごと!?」と驚きましたが、どうやら【櫻井・有吉THE夜会】で、木村拓哉さんが出演したときに、木村家でハマっているボードゲームとして紹介されたようです。
明日よる10時からの #THE夜会 は#木村拓哉 さん #長澤まさみ さんが#夜会ハウス に登場❣️
木村家🏠どハマりの
カードゲーム🃏をみんなでプレイ🎉
ところが、
まさかの生歌披露を掛けた対決へ👊🏼💥センスと想像力が問われる
このゲームの対決の行方は⁉️
そして、
生歌披露をするのは一体、誰だ⁉️ pic.twitter.com/u25N2bEqgd— 櫻井・有吉THE夜会★4/28(木)22時〜【公式】 (@theyakai) September 15, 2021
もともと人気のボードゲームでしたが、放送終了後にゲーム販売店の「ホビージャパン」のオンラインストアでは次々と売れ始め、すぐに完売。キムタク効果すごいですね・・・!(※2022年1月現在は在庫が少し入ってきましたが、数は多くありません。見つけたらラッキーかもしれません。)
老若男女問わず万人受けするこの『ディクシット』ですが、SSTのスキルをゲームを通しながら楽しく養うことができます。
今回は専門的な視点も交えながら、『ディクシット』を紹介したいと思います。
『ディクシット』ってどんなゲーム?
『ディクシット』は、2010年にドイツ年間ゲーム大賞を受賞したゲームで、コミュニケーション・ボードゲームのブームを世界中に巻き起こした名作ゲームです。
簡単にルールを説明すると、『抽象的なイラストから言葉(ヒント・お題)を考えて発表→他の人のカードの中から自分のカードを当ててもらう』というゲームです。
しかし『全員に当てられたら得点0ゼロ』というルールがあります。
そのため、『相手に伝わるか伝わらないかの絶妙の言葉(ヒント・お題)をいう必要がある』のがゲームのポイントです。
その表現に、それぞれの子どもたちの個性がとても出るので、本当に心から笑って楽しめる面白いボードゲームです。
対象年齢8歳以上とありますが、年中さんくらいからでも参加できます。
おすすめポイント① 想像力と言葉のスキルが鍛えられる
イラストから想像してヒント(言葉)を考えることで、想像力と言葉のスキルが鍛えられます。ヒントが簡単すぎると全員に当てられてしまい、点数が入りません。
かと言って、難しすぎると全員ハズレてしまい、これもまた点数が入りません。
なので、何人かには当ててもらい、何人かはハズレてもらう必要があります。その伝わるか伝わらないか、くらいの絶妙なヒント(言葉)を考えて選ぶことが重要です。
ゲームを通して、想像力と言葉のスキルが鍛えられるのです。
とはいえ、特別支援学級の子どもは障害の特性がさまざまなので、イメージして言葉にするのが難しい子どももいるでしょう。
そういう子は、イラストの絵を見たまんま答えてもいいです。例えば、ネコのイラストが描いてあれば『ネコ』と言っても大丈夫。
みんなに当てられて点数が入らなくても大丈夫、あとで説明しますが、このゲームのいいところは敗者がいないのです。
このゲームをして、最後に負けて悔しがったり、パニックを起こしている子を私はこれまでに見たことがありません。こんなゲームはなかなか無いと思います。
どんな子どもでも参加できるのが、このゲームの素晴らしいところです。
おすすめポイント② 相手との違いを楽しみ、互いの個性を認め合える
『ディクシット』のイラストはちょっと不思議です。可愛くもあり、ちょっと不気味でもあります。
すごく、抽象的なイラストで描かれています。
その感じ方は、その人の感性や想像力によってまったく異なるので、その感じ方のちがいを楽しめるのが「ディクシット」の最大の魅力でしょう。
特に大人が思いつかないような子どもの発想に驚かされることも多々あります。
「あぁ~なるほどね!」「わかるわかる」「なんじゃそりゃ!」「そんなヒントで分かるか~」といった言葉が笑いながら自然と飛び交います。心から笑えて本当に面白いです。
個性がすごく出るゲームでもあるので、「○○ちゃん(くん)らしいね~」と、その子の個性を認めてあげる言葉も自然と出てきます。
また、対人意識の薄い子どもの場合、友だちへの関心が育ちにくく、名前などの表面的なことにとどまりがちです。
そういう子には『ディクシット』を通して、友だちへの注目をうながし、相手のことを知る楽しさを教えることができます。
このゲームは、相手との違いを楽しみ、互いの個性を認め合ったり、相手のことを知る楽しさを体験できるのです。
おすすめポイント③ 自尊心を高めることができる
Aちゃんは食べることが好きな子でした。Aちゃんは食べ物の絵が描いてあるカードを出したので、みんなはすぐに、それがAちゃんのカードだと分かりました。
もちろん全員に当てられてしまったので点数は入りませんが、「Aちゃんらしいね!」と言われて、「自分のことをわかってもらえている」と感じたようで、とてもうれしそうな顔をしたのです。
注意や怒られることが多い子どもは、自尊心が低くなりやすいです。ADHDの子は特に「自分はダメなやつ」「何をしても失敗する」など自分を否定的にとらえやすいようです。
ですが、この「○○ちゃん(くん)らしいね」という言葉には、「あなたのことを分かっているよ」という相手を認めてあげる気持ちが含まれています。
「自分のことをわかってもらえた」という気持ちは、子どもの自尊心を高めることができます。
そんな空間はとても和やかで、楽しい時間を共有している間に、自然と心の距離が近づいていることに気が付くでしょう。
おすすめポイント④ 勝ち負けがないゲーム!
このゲーム、実は勝ち負けが存在しません。敗者がいないゲームなのです。
ルールでは「得点が1番多かった人が勝ち」とありますが、実際にプレイしてみると分かりますが、『ディクシット』はコミュニケーション・ボードゲームと銘打っているとおり、相手のことを知る楽しさがゲームの本質だからです。
子ども同士が初対面なら、お互いのことを知るきっかけにもなって仲良くなることができます。逆に仲がいい者同士でも、相手のことを知っているほど盛り上がります。
「○○ちゃんなら、絶対にこれでしょ?」とみんなが当てて「なんでわかったの~」と笑い声が飛び交う場面がよくありました。
得点が入らなくても、笑いあい温かな雰囲気のままゲームを楽しむことができるのです。
ひとつだけ注意点をあげるとすれば
一応ゲームの最後には得点発表をしますが、点数を黒板にしめさずに、口頭でさらっと発表しただけにとどめるといいかもしれませんね。
ただ『ディクシット』をやって、終わったあとにパニックを起こした子を今まで見たことがありません。本当に不思議なことです。みんなが「またやりたい!」と人気の高いボードゲームです。
まとめ
今回はSST(ソーシャルスキルトレーニング)の取り組みに、コミュニケーション・ボードゲームの『ディクシット』をご紹介しました。
すでに特別支援学級や通級学級で使っている先生も多いのではないでしょうか。もしまだ取り入れていなくて
「SST(ソーシャルスキルトレーニング)でどんなことをすればいいんだろう?」
「勝ち負けのこだわりが強い子がパニックを起こさず、仲良く遊べる遊びはないだろうか?」
と悩んでいる方がいましたら、今回のお話が参考になりましたら幸いです。
Amazonの口コミ評価は241件もあり、★★★★☆5つ星のうち4.5と大変好評価です。『ディクシット 2021年度版 日本語版』が再販され、内容物が遊びやすく改良されました。
とても人気が高いので、これからまた新版も販売されるかもしれませんね。少し価格が高いですが、まちがいなくお値段以上の価値があります。
どこのホビーショップでも取り扱っているわけではないので、確実に購入するならオンラインがおすすめです。